『衛星通信チャンネルD、こちら0011』
                    (『0011ナポレオン・ソロ』作中より)

『冒険王』連載分より

 私は『0011ナポレオン・ソロ』(原題 The man from U.N.C.L.E.)が大好きだ。
このTV映画は、国際特務機関U.N.C.L.E(アンクル)の主任捜査官ナポレオン・ソロ(演:ロバートヴォーン)とイリヤ・クリヤキン(演:デヴィット・マッカラム)が、世界征服を企む国際犯罪組織<スラッシュ>やマッド・サイエンティストの陰謀を未然に防ぐというストーリーであり、昭和40年から日本TVで放映されたスパイ映画である。当時は映画007シリーズに劣らず世界中で大人気を博した事から劇場版も全8作まで公開され、姉妹番組として『0022アンクルから来た女』まで製作されている。余談であるが『ナポレオン・ソロ』の原案は、007の原作者であるイアン・フレミングによるものらしい。
 
 
劇中使用され、世界中をアッと驚かせた名銃゛ワルサーP38アンクルタイプ゛のモデルガンや、小説、ゲーム、カルタ等『ナポレオン・ソロ』の関連グッズも数多く発売され、今でもオークション等で高額で取引されている事からも当時の人気の高さが窺えよう。当然の事ながらコミカライズも出ており、私の知る限り3人の作家によって描かれている。最も知られているのはさいとうたかをの『0011ナポレオン・ソロ』であろう。この作品は秋田書店の『冒険王』で連載され、同社サンデーコミックスで全3巻が発売された。

 因みに、私がさいとうたかをの作品を初めて読んだのはこの『ナポレオン・ソロ』が最初であった。小学生の頃、古書店でたまたまコミックスを発見。タイトルが気になって購入した事が読むきっかけだったが、当時はTV映画を見た事はおろか存在すら知らなかった私にとって、さいとうたかを版『ナポレオン・ソロ』に出てくるソロとイリヤはカッコ良く描かれており、当然TV映画の二人もさぞカッコ良いのであろうと思っていた。ところがそのTV映画を見て、二人の個性ある顔立ちや性格描写の違い、銃を撃っても敵にHITしない事も多い等、漫画との違いにかなりショックを受けてしまった。今ではTV映画版の方が好きであるが、やはり私にとってはコミックス版『ナポレオン・ソロ』も忘れられない作品である。

 そんなこのさいとうたかを版『0011ナポレオン・ソロ』に、コミックス未収録の幻の最終話が存在しているのはあまり知られていないと思う。
この最終話は『爆破時刻は!?』と言うタイトルで、『冒険王』の昭和42年7・8月号の2回に渡り掲載されたようだ。
ストーリーは次の通り。

 警戒の厳重なアメリカ宇宙開発ロケット基地。
ここではラスク博士と助手バディによって新型ロケットの開発が行われていたが、新型ロケットのエネルギーが新兵器利用に使われる事を恐れる博士は、バディと共に時限爆弾を仕掛けた。翌日、何者かによりアンクル本部に『ロケット基地を時限爆弾で爆破する』と言う密告があり、情報を確かめるべくソロは基地、イリヤは博士を調べる為、行動を開始した。

 イリヤは博士の宿泊しているホテルで博士を見張っていた。博士が散歩に出かけた隙に部屋を調査しようとした時、ホテルの前で護衛役は殺され、博士は何者かに誘拐されてしまった。博士が誘拐された直後、イリヤは博士の部屋の前に泊まっていた助手のバディが、ホテルの裏口から逃亡しようとするのを目撃。博士に断りもせず、裏口から逃亡しようとするバディに疑いを持ち、問い詰めるイリヤ。実はアンクルに密告したのは助手のバディであった。バディの証言によると、ロケット発射台の裏側に仕掛けてある時限爆弾が今日の午後6時に爆破すると言う。爆破までにあと2時間近くあると言う事を聞き、安心したイリヤは通信機を使ってロケット基地に潜入したソロに連絡をとろうとする。しかし基地内部の壁は特殊装置がしてあり、電波は通じない。イリヤは基地に電話をして爆弾を処理してもらおうと考えるが、基地への電話はソーン市の基地管理局を通して出ないと許可が下りず、許可が下りて基地に通じるまでに1時間半は掛かってしまう事が判明。しかもバディの話により、ラスク博士以外に時限装置を外せる人がいない事や、小型ながら原子爆弾くらいの威力がある事を知り、バディと共に基地へ急行した。

 一方、原爆ほどの威力のある爆弾を探しているとは夢にも知らないソロは、ロケット基地に潜入。時限爆弾を発見したものの時限装置を外す事が出来ず、ひとまずソーン市の管理局まで爆弾を持ち運ぶ事を決意。番兵に詳細を説明する時間が無い事から、警戒厳重な警備を突破し、ソーン市へ車を飛ばす。その直後イリヤ達は基地に到着、ソロが爆弾を持って脱出した事を知り、ソーン市の基地管理局まで急いで後を追った。

 ソーン市の基地管理局まで車をすっ飛ばすソロは、道中スラッシュの幹部・ダーウィンとその部下達に襲撃される。ラスク博士を誘拐したのは彼ら<スラッシュ>であり、爆弾に使われている特殊火薬を手に入れる事が目的であった。突然襲撃を受け、車は岩山に激突するも、間一髪で車から爆弾と共に飛び降りたソロは岩山に身を潜めた。ダーウィンはソロに時限爆弾を渡す事を要求するがこれを拒否。銃撃戦となるが、ラスク博士が銃弾が爆弾に当たった時の事を考え、銃撃を止める様ダーウィンを説得。もはや爆破時刻まであと45分しかない…。ダーウィンは爆弾を捨てて逃げるように通告するが、ソロは爆弾を手放さなず、仕方なくダーウィン達は博士と共にその場を立ち去った。

何も事情を知らないソロは、イリヤが見張っているはずのラスク博士がスラッシュと一緒にいた事を不審に思い、通信機を使って彼に連絡する。ソロの居場所が分かったイリヤ達はすぐさま急行し、事情を説明。驚くソロ、爆破まで時間は23分しかない。爆弾を置いてとりあえず逃げようと言うバディに、ソロは時限装置を外すように説得する。弱気なバディは自分だけ車に乗ると、ソロとイリヤを残してその場を逃げ去った

もはや、二人には逃げる事も時限装置を外す手立ても無く、無常にも時間だけが過ぎていく…。

爆破まであと15分、その時一台の車が二人の方へ向かってきた。二人の前に姿をあらわしたのは逃げたはずのバディだった。彼は出来るかどうかは分からないが、時限装置を外す為に戻ってきたのだった。
あと8分、記憶を辿りながらバディが時限装置を外していく…記憶が途切れ、うろたえるバディ。見守るしかないソロとイリヤ。時間まであと数秒・・・、突然奇声を上げてバディが爆弾を放り投げる。爆弾は岩にぶつかるが爆発はしなかった。バディは遂に時限装置を外す事に成功し、大惨事を未然に防ぐ事が出来たのであった…。

 この話が掲載された時点で既に3巻が発売されていた為、出版社側としては最初から新書版には収録する気が無かったのだろう。私はこの最終話が存在している事にも驚いたが、それより最終回にして初めてさいとうたかを版゛アンクル・スペシャル゛が登場した事に感動と驚きを隠せなかった。それにしても最終話である以上、せめてスラッシュの支部を一つくらいは壊滅させて欲しかったと思ってしまうのは私だけだろうか?

   

     オープニング    最初で最後のアンクル・スペシャルで敵を迎え撃つソロ   これが本当の最終シーン!

  

<おまけ:アンクルスペシャルを構えるソロ>
                              多分これはモーゼルM1914タイプのアンクルタイプでしょう。



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