『たった二つの瞳に会う為に、オレは甲子園を目指さなくてはならないんだ』
                                                         (『ガッツジュン』作中より)

『少年チャンピオン』連載分より

 私が『ガッツジュン』を知ったのは中学生の時、深夜TVで『懐かしの少年映画名作劇場』という、実写ヒーロー番組(『ジャイアント・ロボ』や『悪魔くん』、『快傑ハリマオ』や『シルバー仮面』等)を1話丸ごと放送してくれると言う番組の中で放映されたからであった。
毎週、懐かしいヒーローが見れると言う事で結構楽しみにしていたのだったが、そんな中で『ガッツジュン』という作品も放送される事を知り、ヒーロー物とは違う明らかにダサく(死語)、確実に熱血モノを連想させるタイトルが『非常につまらないドラマなのでは・・・』と言う不安を感じながら見た。
 が、OPを見た瞬間から、そんな不安は一瞬にして吹き飛び、嵌ってしまった。
 興味を持った点としては、

 @主題歌が気に入った。
  歌詞も曲調もGood!OP中に流れている高校野球の試合ともマッチしている。私の知ってる実写ヒーロー物関係の歌の中では、『アイアンキング』のED『ひとり旅』に並ぶ名曲!
 A連載は何と『少年チャンピオン』!
  原作は『サインはV』で知られる神保史郎、漫画は小畑しゅんじが担当。昭和46年に連載された。
 B出演者が名優揃い。
  準主役で小野進也(『ワイルド7』の飛葉)や畠山麦(『秘密戦隊ゴレンジャー』のキレンジャー)、他に瑳川哲郎や丘みつ子、更にゲストで、近藤正臣や范文雀等も出演。

 以上が挙げられる。

 結局、『懐かしの少年映画名作劇場』は半年で終了したが、その期間内に『ガッツジュン』は3回放映された。順に放送してくれたら良いのに残念ながら1.2.4話が放映された。第2話では反則スレスレで、相手チームを片付けるアタックチーム・金星高校との練習試合の途中、負傷した左腕エースの大野に代わりマウンドに上がったジュンは、バント処理をする際に1塁めがけ全力疾走するバッターに手を踏まれそうになるところで終わってしまい、続きが知りたくて仕方が無かった。

 TV版『ガッツジュン』を見た後、すぐに漫画の探求を開始。単行本は無い物とばかり思っていたので、当時の『少年チャンピオン』を探すが、その内に立風書房のダイナミックコミックスというレアなレーベルから全3巻で単行本が発売されている事を知る。しかし『どっこい大作』もそうだけど、TV化までされていながら、どうして秋田書店からチャンピオンコミックスとして単行本が発行されなかったんでしょうかねぇ?当時としては『別冊少年チャンピオン ガッツジュン特集号』まで出ていた事や、ダイナミックプロお得意のパロディシリーズ(『月光仮面』⇒『けっこう仮面』、『まぼろし探偵』⇒『まぼろしパンティ』等)みたいに、石川賢が『ガッツき!ジョン』なる作品を描いてあったり等、人気はあったのではないかと思うんですが・・。

 さて、『ガッツジュン』のストーリーであるが、高校野球の名門として知られる名雄高校野球部に入部した剛球投手・沢村純は、幼い頃生き別れた父親(野球関係の仕事をしているらしい)に自分の姿を見てもらう為、甲子園のマウンドを目指すというものである。ライバルである先輩の左腕エース・大野の他に、柔道特待生から野球に転向した清和高のグラウンドの殺人者(!)小室、曉東高の破壊バッター(恐るべき九番打者)竜次郎、北応高の赤い弾丸・多門五郎と対戦しながら都予選を勝ち抜いていくが、決勝戦で対戦する霧が丘高の強打者・二階堂竜は何故かジュンの父親の写真を肌身離さず持っていた・・・。
ジュンの父親はかつてプロ野球選手を目指したが、夢がかなわずに家族を捨て新人を発掘、名選手として育てる事に生涯の夢を託していた。二階堂竜もそんな父の育てた選手の一人であった。その事を知ったジュンは、自分を忘れ他人を育てる父親に復讐する為にも、決勝で二階堂竜に勝つ事を誓うのであった・・・。

当時、『少年チャンピオン』でも力を入れていた。 オープニングを思い出す投球シーン 有名(?)なガッツポーズは作中2回のみだった

  藤間文彦が演じるTV版のジュンは、ひたむきで真面目な少年のイメージで好感が持てたが、漫画を最初に読んだ時のジュンの印象は、短気で生意気な単なる野球バカだった(読む内に違和感は無くなったけど・・・。)又、荒唐無稽なレインボーボールと呼ばれる魔球などが生み出されたTV版に比べ、漫画版はあくまでも剛球一本で勝負。しかし都予選の決勝戦で二階堂竜にホームランを打たれて負けてからは、ジュンは剛球一本の投球に限界を感じて空手を会得。最終回では会得した空手の呼吸(タイミング)により編み出した魔球を披露する。
  
  それにしても、曉東高・竜次郎は苦労の末あみ出した変則バッティング(要は打球がイレギュラーバウンドして背後からピッチャーを襲う魔球)と言う素晴らしい(?)を技を持っているのに何故九番打者なんだろうかとか、投げる・打つ・守る事は必要なく、ただ走るだけで良いなんて考えている赤い弾丸・多門五郎は塁に出られなければどうするんだろうかとか、色々考えさせられました(笑)
  数ある野球漫画の中でもムック本等で取り上げられる事も殆ど無く、今や存在を知っている人も少ないと思われるこの作品。ここで取り上げた事により、少しでも多くの人に知って頂ければ幸いである。
  あ〜あ、どこぞで再放送予定無いかなぁ・・・。
                

                            <おまけ:これが噂の『ガッツカット』だ!>
                          
                                どうやらガッツカット(単なるG.I.カット)は当時の若者にウケなかったようだ。
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