『ひひひ・・そいつをこの地獄でいじめてやるのさ
                                   (『銅羅衛門』作中より)

『パロディ・マンガ大全集』掲載号より

 日本の国民的キャラクター『ドラえもん』をパロディにした、もうひとつの『ドラえもん』が存在する事を知っているだろうか?
その作品は、ホラー漫画家として有名な日野日出志によって描かれた『銅羅衛門』である。
掲載されたのは昭和56年発行の『マンガ奇想天外 臨時増刊号』、余談であるがこの号に赤塚不二夫の描いた『銀河鉄道999』のパロディ版・『銀座鉄道999、999』も掲載されている。

 『銅羅衛門』のあらすじは以下の通り。

 いじめっ子であるシャイアンの似顔絵に鉛筆を突き刺して、日頃の仕返しをしている少年のぶた。
彼を見かねた銅羅衛門は、のぶたの貯金箱を手に未来の国へ行き、『ミニ地獄マシン』という未来商品を持って帰ってきた。

 その機械に写真を入れるとその人物が豆粒ぐらいになって出現、それをこの『ミニ地獄マシン』の中でいじめる事が可能であり、未来社会ではすごく流行っているという。
見ると針の山に火の池、火あぶり、釜ゆで、石うすや切り刻む道具など全てがセットになっている恐ろしい機械であった。

 興味を持ったのぶたと銅羅衛門は、普段からいじめられているシャイアンの写真を機械に投入、現れたシャイアンを地の池や針の山でいたぶった後、のこぎりで切り刻んでしまう。
もう一人のいじめっ子・ソネ夫も、石うすによって粉々にされてしまう。 こうして二人は毎日地獄遊びに熱中していた・・・。

 そんな1ヵ月後、のぶたはお小遣いを水洗トイレに落としてガックリきた事を銅羅衛門に伝えるが、それを聞いた銅羅衛門は慌てふためく。
実は未来の国から持ち帰った地獄マシンは、地獄の通信販売で、のぶたの小遣いを当てにしてローンで購入した物だった。その事を聞いて今度はのぶたが驚く。と、そこへ地獄の使いが二人の前に現れる。

地獄の使いは彼ら二人に罰として1ヶ月間の地獄行きを命じ、地獄で銅羅衛門は火の池に、のぶたは釜ゆでにされてしまうのであった・・・。

 物語はわずか8頁、展開としては『ドラえもん』の良くあるパターン(ジャイアンやスネ夫にいじめられるのび太が、ドラえもんに助けてもらう)なのだが、
日野作品特有の目の大きさの異なるキャラクターやいきすぎるオチ等、作品全体から伝わる不気味なムードは、本家『ドラえもん』では絶対に味わう事の出来ない日野日出志ならではモノがある。

 残念ながら、この作品は版権問題の絡みもあって復刻は不可らしい。現在のところ読む手段としては収録されている本を入手するしかないが、
日野作品としては貴重なタイトルの1つである為、機会があれば是非一読して欲しい。


 
 

  
いじめっ子『シャイアン』の似顔絵に鉛筆を突き刺すのぶた。どこか恐い・・・。 『地獄マシン』を覗き込むのぶたと銅羅衛門 因みにこれが掲載紙
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